2016年 08月 12日
伊豆大島ツーリング① 宴の支度
去年の春、私は自動二輪の免許合宿先を探していた。どうせなら旅行も兼ねてちょっと変わったところへ行こうと探し、その時に伊豆大島に合宿所があることを知った。
しかしそれと同時に夏は旅行客を受け入れるため合宿所、というか民宿は通常営業を行うので合宿自体が休業となる為その場で諦めたきりだった。
その時に見た伊豆大島の写真は青く煌き、私の印象に強く残っていた。
夏は大島へ行こうと決めてからは大変だった。滞在期間だけは8/13~8/17の5日間と決めていたものの宿の手配に四苦八苦する。何分バイク乗りになってからは出費が嵩む一方で貯金は一向に増えない、そんな中の旅行なのだから豪華なホテルなんてものは勿論、お洒落なペンション等も先立つものが理由で軒並み候補外になる。
最初はairBNBで探そうと気楽に考えていたらなんと大島には1件も登録が無く、小さな島の観光業界の闇の深さについて勝手な想像をめぐらせたりもした。
出費を抑える為にも外食はできるだけ抑えようと自炊をもくろみ、キッチン付の民宿を探すと1件ヒットした。波浮港にある高柳という民宿で1泊4000円。だが電話をかけるも一向に繋がらない。仕方なく他の民宿を10件ほどリストアップしたが恐らく老いた島民たちが経営しているのであろうその宿達は殆ど情報が見当たらない。しつこく何度も検索し、ぼんやりと場所や値段がわかってきたところで1件ずつ電話をかけた。
10件中半分が繋がらない状態で残りの5件もやはり老いた管理人が電話に出、意思疎通がままならない中なんとか情報をまとめたところ本町港にある助六荘という民宿を絞り込んだ。
ここは1泊3000円の素泊まりで、場所は港の目の前。キッチンは無いが近隣に飲食店も多そうなので一先ずそこに予約を入れる。その後諦めず高柳へかけつづけたところ漸く管理人と話が通じたので、最初の一泊を助六荘、残りの3泊を高柳へと変更した。
大島への訪島方法は船か飛行機の二択になる。空路を選択すると費用が嵩む分時間を短縮できる。だが旅情を楽しむため船を選んだ。東海汽船という会社が日の出桟橋から船を出している。ジェット船か大型客船のどちらかになるのだが、バイクを持ち込むとなると大型客船しか選べない。ジェット船は僅か2時間で大島まで着くがそれは小さくて軽い為であり、余計な荷物を積むスペースは無い。
大型客船は時間がかかりこそすれ、コンテナを大量に用意しその中に250CCまでのバイクを積める。持ち込み料は片道6,210円。1泊2日なら高いやも知れないが今回は5日あるので持ち込む方が経済的だしなにより自身のバイクは相棒の様なものだ、彼と離れる事を私はもとより考えていない。
客室のランクは5段階あり、上から特等客室・特一等客室・一等客室・特二等客室・二等客室となっている。船はAからFデッキ迄の6層となっておりもちろんランクが良い部屋はそれだけ上層部になる。特等は個室・特一等は相席の2段ベッドで料金は1万を超える。理想は同じく相席2段ベッドの特二等だったのだが既に満室で取れなかった。
この大型客船は行きは深夜23時に出発し翌朝5時に到着する。これで考えると移動時間は6時間となるのだが、実際は4時間で到着できる。ただあまり早い時間に到着しても何も出来ない為時間調整をしてこの時間に着くようになっている。
早朝からツーリングを始めるとなると体力が重要視される。その為しっかりとした休養を余儀なくされる。よって行きは7人部屋だが寝具が揃っている一等で身体を休め、帰りは雑魚寝の二等を利用しようと考え予約を速やかに実行した。料金は8,840円と4,420円。バイクと合わせて約25,000円の移動費になる。
出発は8月12日深夜、予約はその2ヶ月前に行ったが既に二等は埋まっていた。繁忙期だからだろう、島はどれだけの賑わいがあるのだろう。海はどんな色なのだろう。空は。
8月12日金曜日、19時過ぎに出発をした。タンクバックとツーリングネット、ショルダーバックに荷物を詰め込み貴重品はウエストバックへ入れる。旅は軽装が理想だがやはりそうも言ってはいられない様でかさばる荷物にふらつきながら日の出桟橋へと向かう。
夏至は過ぎた。暑さはあるが既に辺りは暗く日々日の長さが短くなっていく。空気には秋の気配が漂っている。
20時過ぎに到着をする。日の出桟橋のシンボルである帆船をモチーフとしたイルミネーションが輝いている。バイクは手荷物扱いの為荷物を預ける所へ押していかないといけない。私は取り回しが苦手なので大分難儀をしながら預り所へ向かう。女性のバイク乗りが増えたとは云うがやはりどこへ行ってもバイクに乗る女性などそうは見ない。危なげな足取りでバイクを押す私に視線が集中する。周囲を見ないよう視線は前方にのみ絞った。無事係員へバイクを預け、サイドミラーにタグをつけられる。そのタグの半券を切り取り下船時に渡して下さい、と云われ忘れないよう財布へしまう。
大荷物を抱えフラフラと案内所まで行く。その案内所はそのまま待合所になっているようでベンチに寝転ぶ人、キャリーケースに囲まれ荷物番をしている人、親子連れにカップル、合宿の生徒達等様々な人たちで一杯だ。皆これから旅に出るのだろう、瞳は輝き胸を期待で膨らませている。受付まで行き、予約番号を伝え無事チケットを手に入れた。その時ロッカーの位置も教えて貰い荷物をしまう事ができた。
ウエストポーチ一つだけ持ちそのまま外へ出る。ATMへ行くのだろう芝離宮の脇を通り浜松町駅迄歩く。地図を見ながら歩いていたので暫く前方に聳え立つ東京タワーに気がつかなかった。
駅の方は桟橋とは違いビジネス街らしく洒落た店が並び人が多く行きかっている。テラス席で美味しそうにビールを流し込む人々を横目に現金を手に入れ桟橋へと戻る。途中コンビニエンスストアへ寄り軽食を手に入れた。
自分の番号が書いてある部屋を見つけノックをし滑り込む様に室内へ入る。壁際に寝具の準備をしている女性が一人いるのみだった。挨拶もそこそこに荷物を棚へ収納しデッキへと向かった。
デッキは幸いにもまだ人は殆ど居ず、船首へ行く事が出来た。出港するのは23時だが、アナウンスで満員の為若干出発が遅れると流れている。レインボーブリッジを眺めながら用意したビールで一人乾杯をする。
船内がこの様な状況になっているとは想像していなかった。まさに難民キャンプかの様な状態に唖然とした。良く見ると少年だけではなく子と一緒に寝ている母親もいる。老若男女がごったがえし思いもよらない隙間に寝転び歩く事がほぼ不可能な状態となっている船内を縫うように進む。
コインシャワーだ。200円で10分お湯が出る。冷え切った身体を温める為に、お湯を10分間浴び続けた。ここへ来る直前に風呂は家で済ませてきた。これで充分だ。流れる水音に集中する。肌の上だけでなく体内にも流れ込んでいくような気がしてくる。
by delta49032
| 2016-08-12 23:56
| 旅